1:邂逅
昼下がり、雑踏の中を歩く少女たちに怪しげな男が
近づく。
「もし、そこのお嬢さん」
「え?」
「良いブレスレットをお持ちですね、貴女に似て綺麗だ」
「あ、ありがとう…ございます…?」
「とても気に入りました。ぜひお譲りいただけませんか?言い値で構いませんので」
「あー……えっと……」
「もちろん、大切なものなのだろうなということは想像がつきます。それでも、」
「ごめんなさい。これは父の形見で、他の人に譲るわけには」
「そこをなんとか!お願いします!」
「えっと、その……」
「刹那、こんな怪しい奴ほっとといて早く行こ」
ミディアムヘアの大人しそうな少女がポニーテールの少女―刹那の手を引き場を去ろうとする。これ以上この男に構っているとロクなことにならない、彼女の直感がそう叫んでいた。
「あーもうめんどくせえな。そんなまどろっこしいことしてないでとっとと奪っちまった方が早いだろうがよ」
しかし、それは少し遅かったようだ。彼女たちが逃げようとした方向から乱暴そうな男が歩いてくる。さらに、気づけばいつの間にか彼らの仲間らしき男たちに囲まれている。
「まったく……あなたはいつも暴力で解決しようとするんですから」
「いーだろ、どうせそれが一番早いんだからよ。それにこんだけの人数がいりゃあ大人しくブツを渡そうって気にもなるだろ」
「それもそうですね。というわけで、大人しくブレスレットをお渡しいただければこちらも手荒な真似はしなくて済むのですが……」
周りの男たちが少しずつ輪を狭めていく。逃げ出せるような隙間はないし、仮に上手く間を抜けれたとしても少女たちの足ではすぐに追いつかれてしまうだろう。命には変えられない……と刹那がブレスレットを外そうとしたその時
「お巡りさんこっちです!こっちで怪しい人に囲まれてて!」
「チッ、サツか。随分と足が早い」
「どうする?こいつらごと拉致るか?」
「いえ、リスクが大きすぎます。ひとまず撤退しましょう!」
「おい、待てよ!」
警察沙汰になるとマズいのだろう、男たちが方々に散っていく。少しするとロングヘアをなびかせ1人の少女が駆け寄ってくる。
「2人とも無事!?」
「茉莉!?」
「助かった〜、ありがと!でもどうして?」
「いやさ、2人がなんか変なのに絡まれてるな〜と思ったら囲まれて見えなくなったから……一芝居打った、ってわけ。にしても美鈴、これってやっぱり……」
「うん、十中八九奴らだと思う。」
「2人ともどうしたの?」
2人の少女―茉莉と美鈴には襲撃者の心当たりがあるようだ。刹那だけが目の前でよくわからない話が始まりきょとんとしている。そんな刹那を放ったまま2人の相談は続く……。
「奴らは刹那のブレスレットを狙ってた。ってことは恐らく……あの話が漏れたのかな」
「どうしよう、こうなった以上全部話した方がいいかな。」
「どうだろう、私たちで決めるのは……。どちらにしても清二さんのところには行こう」
「そうだね」
「ねえ2人とも!なんの話してるの!!」
「ごめんごめん。そんなことよりさ、刹那に会ってほしい人がいて」
「会って欲しい人?」
「うん、じゃあ今からいくよ!」
「えっ、待ってよ~!」
2:襲撃
あの襲撃から数時間後。刹那達は郊外のとある大きな日本家屋の前にきていた。
「ねえ、本当にここであってるの?ってか会わせたい人って誰なの?」
「安心して、合ってるから。まあ誰かっていうのは……会ってみてのお楽しみってことで!」
そういうと茉莉と美鈴は中に入っていく。「ええ……」と呟きながらも刹那も2人を追って中に入る。
通路の最奥、一際立派な装飾の施された扉の前で2人は立ち止まる。
「清二さーん!」
茉莉の呼び掛けに応じて出てきたのは、いかにもマフィアといった初老の男性だった。
「茉莉に美鈴か。一体どうしたんだ?今日は……それにそちらの方は?」
「それが……」
茉莉がつい先ほどあったことと自分たちの推測を話す。話が進むうちに清二の落ち着きがなくなっていく。
「なんと、ついに刹那のブレスレットが神器だということがバレたか……。」
「ええ、恐らくは。奴らはすぐにここも嗅ぎつけてくると思います。」
「ふむ……外に出ている若い衆を呼び戻すか。」
「その方がよいかと」
「ねえ美鈴ちゃん、私はなんでここに連れてこられたの……?」
「えっと、それはね……」
「それはじゃな、お主のブレスレットに秘密があるからじゃよ。」
「秘密……?というかそれ以前に、どちら様ですか?」
「おっと失敬、名乗るのを忘れておったの。儂は『蒼龍組』会長、大宮清二。お前さんの叔父さんじゃよ。」
「大宮……私と同じ……って叔父さん!?」
「そうじゃ。まあ最後に会ったのはお前さんが3歳の頃じゃったし……覚えておらんのも当然じゃろうな。それにしても刹那、大きくなったのう」
「ありがとうございます……。それで、ブレスレットの秘密って?」
「話せば長くなるのじゃが……」
そういって清二が語った内容は刹那には到底信じられないものだった。曰わく、ブレスレット・チョーカー・ティアラ・ピアスの四種類のアクセサリーにはそれぞれ四大元素の力が宿っており、それら全てを集めると一定の周期で願いが叶うという。最後に使われたのは70年ほど前、終戦後まもない日本で再興のための願いとして使われたらしい。
「そんなの有り得ない!だって日本の戦後復興は……」
「もちろんそれもある。いわばそれは表の歴史じゃな。しかし物事には裏というものがあるのじゃよ。詳しくは語れんがまあドラゴンボールみたいなものじゃ。そしてその後、悪用を防ぐため種の違う4つの組織に神器が隠されたのじゃが……。どこからかその話が漏れ、神器を集めようとする過激派組織が現れたのじゃ。名を……なんといったかのう」
「『自由の光』です。」
「そう、それじゃ。自然環境が乱れたのは人間のせい、今こそ人間は大きく数をへらし母なる地球を大切にすべき……とかなんとか言っての。」
「じゃ、じゃあ昼間のあれって……」
「恐らく『自由の光』の連中の仕業じゃろう。奴らは目的の為には手段を選ばない……」
「頭!表が襲撃を受けてます!!」
話の途中だったが、組員が転がりこんできた。
「なんだと!茉莉、美鈴、刹那を安全なところへ……」
「残念♪もう手遅れだよ」
声の方向を向くと、二丁の拳銃を手にしたチャイナドレスの男が立っていた。ここまでに何人か殺してきたのだろう、靴は血で汚れている。
「ここは儂らに任せて先にいけ!」
「ジジイで止められるわけないでしょっ!」
「ぬかせ若僧!」
激しい戦闘が繰り広げられる中、ふと襲撃者をみた刹那と、獲物をみた襲撃者の目が合う。
「「あっ……」」
「余所見とは舐められたものじゃなっ!」
動きの止まった一瞬の隙を逃さず、清二の蹴りが男を襲う。間一髪ガードは間に合ったようだがその隙に刹那は逃げていた。
「ちえっ、逃がしたか。じゃあもういいや、興味ないし」
「待て。逃がすと思うか?」
「逃げるよ?僕の専門はそっちだもん。それじゃまたね~♪」
「待て!」
部屋から出た男を追いかけて清二も部屋を出るが、その頃には廊下には誰もいなかった……。
3:自由の光
廃工場の倉庫の中。いかにも不良が溜まっていそうな場所で柄シャツの青年を中心に100人近い集会が開かれていた。
「それで、あいつらに続いて君まで失敗したってわけ?」
「うん、リーダー。……ごめんなさい」
「別に謝罪なんか求めてない。はぁ……いつになったら最後の神器は揃うんだ!」
チャイナドレスの男の返答にリーダと呼ばれた柄シャツの男がキレる。彼らは『自由の光』と呼ばれる過激派組織の集会のようだ
「もういい、この際俺も含めて全員で襲いに行く」
「そんな、危険すぎます!」
「次こそは私が!」
「いや俺が!」
リーダーの暴論に口々に騒ぎ立てる。それもそうだろう、大将自らが戦いに行くなんて愚策すぎる……彼らの気持ちは同じだった。しかし、そんな声も怒りの最中にあるリーダーには届かない。
「黙れ!個々にいって返り討ちにされてるような状況で、同じようなことをしてもあれは手に入らないだろう!!それならいっそ短期決戦を仕掛けた方がいい。あれさえ手に入れば我々の理想は達成されるのだから!!!」
リーダーの強硬な態度に周囲はしぶしぶ折れ、細かい段取りを決める段階に入っていた……。
4:裏切り
その日の夜、とある河川敷
チャイナドレスの男と格闘家めいた格好をした男が対面していた。
「珍しいな、お前がこんなところに呼び出すなんて。熱でも出したか?」
「いや?ただの気まぐれだよ」
「そうか、まあお前はそんな奴だったな。それで?何の用だ?」
「んーとね、ちょっと死んでもらおうと思って!!」
そういうとチャイナドレスの男が素早い蹴り技を見せる。しかし、予想通りと言わんがばかりに悠々と格闘家が避ける。
「ふーん、これを避けるんだ」
「わざわざ一人で呼び出すなんてどうせこんなことだろうと思ってな。どうした、気でも触れたか?」
「だから、気まぐれだって言ってんじゃん!」
会話をしながらも2人の手と脚は止まらない。ただし、勝負には終わりというものが来る。格闘家の拳で飛んだ血が彼の目に入ったのだ。一瞬の事ではあったが、高次元の戦いではその一瞬の隙が命取りとなる。追撃の手が緩んだ瞬間、チャイナドレスの男の脚が格闘家の頭を捉える。ノーガードで受けたその攻撃は格闘家の命を刈り取るには十分だった。
「いい奴だったよ、嫌いじゃなかった。でもごめんね、バイバイ」
深夜、刹那の寝室
「なんか、今日は色々変なことに巻き込まれたなあ……」
そう言ってドアを開けた彼女は信じられないものを目にすることになる。
「こんばんは、おねーさん♪」
昼間の襲撃者……..チャイナドレスの男が人間の生首を持って座っているのだ。
「あなたは昼間の!?茉莉!!美鈴!!助けて!!!」
「わー!!ストップストップ!!!落ち着いて!!!敵対する気はないって!!!」
「そんな言葉信じられるわけないでしょ!!」
「殺す気ならもう殺してるって!!!」
「刹那!どうしたの!?……ってお前は!」
「ストップ!一旦落ちつこ!ね!!!」
「落ち着けるか!!!」
「待って、武器ならほらそこ!!足元に捨ててあるから!!!この距離でいいから話を聞いて!!!」
「聞くわけないでしょ!!」
「本当に!さっきも言ったけど戦うつもりならこんなことしてないって!!」
「仕方ないわね……話くらいなら聞いてあげる。でも少しでも変な動きしたら撃つから!!」
そして2人から銃を向けられたまま彼は語り始める。昼間の一目惚れから河川敷での戦い、そして『自由の光』の襲撃計画を――――
4:最終決戦
『蒼龍組』本部前
「お前ら、これが最終決戦だ!気合いれろ!!」
「「「応!!!」」」
白昼堂々、100人近い集団が門を壊し正面から押し入る。完全な奇襲になるはず―――だった。
「まさか、本当に来るなんてね」
しかし、それはチャイナドレスの男―結愛によって全てバラされていた。それでも、多くの犠牲を出しながらもリーダーを含む数人が奥の間にたどり着く。
奥の間には刹那と結愛、美鈴に茉莉を含む10人程度が待ち構えていた。相手の情報を知っているのを良いことに一網打尽にすべく迎え撃つことにしたのだ。
「まさか結愛、お前が裏切るとはな!!」
「ごめんね~でもこっちの方が面白そうだから!」
「まあいい、まとめて殺すだけだ!」
そして全員が入り乱れる乱闘が始まる。しかし、人数と情報の差で蒼龍組が有利であり、自由の光は少しずつ数を減らしていっていた。だがリーダーの顔に焦りはない。
「今だ!蒼汰!」
「刹那っ!危ない!!」
リーダーの叫びに応じて蒼汰と呼ばれた男が突如刹那に銃を向ける。突然の身内からの裏切りに蒼龍組一同が動きを止めるなか、美鈴だけが彼女を庇って……凶弾に倒れた。
「この裏切り者が!」
そう叫びながら茉莉が撃った弾丸は蒼汰を殺し……次いで結愛を撃った。死角からの弾丸を避けるすべなどなく、結愛も血の海に沈む。
「どうして結愛まで!?」
「どうせこいつも裏切者よ!生かしておく理由がない!!」
その言葉を最後に茉莉も倒れ……リーダーと刹那だけになった。刹那に近づくリーダーだったが、あと一歩という所で倒れ…….しかし、神器は共鳴を起こしたのだろう、不思議な声が聞こえる。
「少女よ、望みをいえ。」
「望み……?それなら、みんなにもう一度会いたい、平和な世界で笑いたい……」
4つの神器がまばゆい光を放ち、刹那の視界が白く染まる――――
エピローグ:別の世界で
「…….な~、おーい………….せつな!!」
「ぴゃい!……あ、まり?どうしたの大声出して」
「どうしたのって……あんたが皆呼んだんでしょ、次の脚本どうするか決まらないからみんな助けて〜〜つってさあ」
「あ〜……確かにそんなこともあった気が……」
「で、来てみたら気持ちよさそうにぐっすりと」
「ごめんごめん。でもさ、面白い夢見たんだよね!すっっっごく物語みたいな!!」
「物語?そんな面白かったの?」
「うん、だから脚本にどうかな〜って。えっとどこから話そうかな…………」
