20××年ーーーー。ロジャー家の庭で一人の少年が穴を掘っていた。7歳の誕生日プレゼントで本物の植木を贈られ、とうとう鉢から植え替える時が来たのである。
「よいしょ、よいしょ、うー、つかれたぁ」
チラッと植木鉢を見る。もう、そろそろいいかな?いいよね?……いやいや、中途半端はこの子がかわいそう。さいごまでちゃんとやらないと。
カツンッ。
何か固い物が当たった。さっきまでの疲れはどこへやら、夢中で掘り進めた。
それは、古い箱のようだった。見たことのない色、質感。こねくりまわしていると不意に蓋がぽろりと取れた。
中には黒くて丸い板のようなものが一枚。
お宝じゃないのか、とガッカリしたのもつかの間、もしかしたらこれは大発見かも、と思い直しデバイスでスキャンしてみた。
【レコード】音声を記録するもので樹脂円盤に……。
「音声!?声が入ってるの!?大発見だ!!」
そこからは家中で大さわぎ。誰も使い方が分からないから。レコードとやらを聞く専用の機械は古くて希少なのでとても買えないと言われしまった。そこで僕は自分で作ることにした。仕組み自体はそんなに難しくなかった。針を当てて円盤を回すと音が再生されるらしい。夏休みの自由研究にはちょうどよかった。ようやく音を本来のスピードで再生することができるようになった。ずっと昔の人が残した声。何が入っているんだとどきどきしながらそうっと針を置いた。
するとすぐにワアアァ……と激しい音と声が響き始めた。
「新天地」 -テンジョウビト-
立ち上がれ MY BROooooooooTHER!!
下向いてる時間なんてない 誰にも明日はやってくる
夢をみようぜ兄弟よ 世界中のお宝探そう
火星人とも友達さ ほら太陽が笑ってる
立ち上がれ MY BROTHER!
楽園なんてないけど そうさここが新天地
何だってできる 何だってなれる
光れ俺らの可能性!!
お前の夢を笑った奴は俺らが果てまでぶっ飛ばす!
天は人の上に人を作らず 人の下に人を作らず
ならば皆で空を駆け 天国作ってやろうよ なあ!
悔し涙もアクセサリー ほら俺らはちゃんと見てるから
WowWowWow Yeah (Yeah)
燃やせSoul 壊せWall 掴めWorld
For Our FREEDOM!
進めRoad 目指せGoal 集えAll
Go on the lightway!
立ち上がれ MY BROTHER!
楽園なんてないけど そうさここが新天地
何もないって 最高じゃねーか
まだまだ俺らは先を行く!!
お前の夢を笑った奴は地球の果てまでぶっ飛ばす!
何だってできる 何だってなれる
光れ俺らの可能性!!
輝け俺らの新天地!!!
僕は気付けば泣いていた。なんでかは分からなかった。分からないけど何かすごい衝撃が心を貫いたのだ。
1987年、日本がバブル時代と呼ばれた頃に流星のごとく現れた無名のバンドマンのデビュー曲、「新天地」は瞬く間に国民的楽曲として脚光を浴びた。未来への希望に満ちたこの曲は、しかしながらバブル崩壊と共に忘れ去られ、いつしか姿を消した。
彼らの抱いた理想の未来ではなかっただろう。日本中が熱狂した夢は叶わなかったかもしれない。
それでも。
古い時代の人々の魂の叫びは、百年先の一人の少年の心にも届いたのであった。
