2024-04

第十一回(桜、ケチャップ、文庫本)

ケチャザクラ

キッチンに立ち、ケチャップが底に落ちているジョウロに水道水を注ぐ。こうして誰も起きていないような早朝に、習慣化した作業を行っていると日常を再確認できたような気がして頭がすっきりする。ただこの歳になると自然と早朝に起きてしまうだけの話だが。 ...
第十一回(桜、ケチャップ、文庫本)

夏に散る桜

美月に服の裾を引っ張られる。  私はレポートを書き終わるまで、もう少しだったので、彼女の行動を無視した。  すると、彼女は、さらに強くグイグイと服を引っ張る。あまりの引っ張りに、キーボードを打つ手がずれた。  私は観念して、彼女の方を見た。...
第十一回(桜、ケチャップ、文庫本)

妙な噂

「ケチャップを文庫本にかけてしゃぶると美味いらしい」 4月の初旬、ようやく桜が見ごろになってきたころ、こんな噂が学校中を駆け巡った。図書委員だった俺は、今までの閑散とした図書室の様子から一変、朝の駅のように殺人的に混み合う貸出コーナーに立っ...
第十一回(桜、ケチャップ、文庫本)

オム大のオムはオムライスのオムではありません

「ケチャップってさ、さすがに不当に軽視されてると思うんだよね」  こういう切り口で目の前の男が話し出すとき、俺は脳の処理能力をつとめて他の事柄に向ける。 経験上、そのすべてが与太話だからだ。 「そうか」「そうだよ。ケチャップは味気ない、子供...
第十一回(桜、ケチャップ、文庫本)

シュレディンガーのケチャップ

───────────────────────To:[Judge]Dyham───────────────────────Title:赤き異物の風聞───────────────────────  冥土の話題は奇っ怪な異物で持ちきりでござい...
第十一回(桜、ケチャップ、文庫本)

ケチャップ桜餅

「ケチャップ桜餅という文庫本を買いますか?」「あらすじは?」「主人公は、桜餅にケチャップをかけて食べる。  すると、彼は人生の底を知り、世界の広さを理解した。そして、宇宙の断りに触れる。  と書いています。」「値段は?」「30円です。」  ...
第十一回(桜、ケチャップ、文庫本)

桜爆ぜり

曰く、古物には魂が宿ることがあるという。 年月を経るごとに物には霊性が宿り、やがて自ら変化するだけの力を得て、己を棄てた人間への鬱憤を晴らさんと活動を開始する──というのが「付喪神」という、所謂妖怪変化の類らしいのだけど。それとは別に、わた...
第十回(輪、サンダル、古本屋)

勢い

「人が空想できる全ての出来事は起こりうる現実である」────物理学者 ウィリー・ガロン   この言葉が正しいのならば、俺に彼女ができるのも時間の問題だということだろう。太古の昔、ヒトは地面を見つめ続ける生活に別れを告げ、そこから数百万年掛け...
第十回(輪、サンダル、古本屋)

第六感覚環世界

掃除の合間教室の窓にもたれて立ち、僕はぼーっと校庭を眺めていた。サイズの大きいサンダルで歩く音が聞こえる。僕は聴覚プリセットでノイズキャンセリングを行った。「ねえ、こころってどこにあると思う?」話しかけてきてびっくりした。拡張視覚から、この...