普通に無理でした

 こんばんは、ばったです。
 本名、龍獄門 伐汰です。

 まずは、小説祭に投稿して頂いている皆さん、小説祭を読んで投票してくれている皆さん、ありがとうございます。皆さんのおかげでこの企画は成り立っています。感謝してもしきれぬ、リトルグリーンメンも驚きの永遠の感謝をここに置いておきます。

 皆さんの気持ちは分かります。

 本来は小説の「起」が寝そべっていなければならないこの場所に、なぜこんな取るに足らない挨拶が我が物顔でスペースを取っているのか。もしかして、お前、このままお茶を濁して小説と言い張る気なのか。感謝されたって、べっ別に嬉しくないんだからね! ふん、くだらん余興だ……。俺っちも小説を書きたいでやんすよ〜! あーあーめんどくせぇ、珈琲でも飲ませれてくれや。オレぁ、ただ強ェ奴と戦いてぇだけだ。ちょっと! 一人ぐらい真面目なヤツ居ないワケ!?

 なんて、読みながら心の中で呟いているでしょう。しかし、わたくしとて好きでこんな文章を書いている訳ではありません。きちんとした理由があるのです。

 そう、それは……

         思
         い
         つ
         か
         な
         か
         っ 
         た

           からです。
         

 今回のお題は「中毒」なのですが、恥ずかしながらわたくし一砂もアイデアが浮かばなかったのです。

 そこで、ここは一つある体験談をお話しようと思います。体験談と言いました。つまり日常の範疇を越えない、皆さん誰しもが体験したことがあるものに過ぎません。それでも、どうか最後までお付き合い下さいませ。

 舞台は二百と十年前。わたくしが違法薬物系画塾、アトリエ野菜に通っていたあの日の教室。その日の授業が終わり、私を除けば先生しか残っていなかった教室で、語り合うところから始まります。

◇◇◇

「いいか。魂という名のオリジナリティだ。それが分からぬものに真に素晴らしいものは作れない」
「先生。つまりあなたにとって、素晴らしいものとは?」
「破壊だ。それでいて創造だ。そこにひと匙の媚びだ。あとは恥じらい、それと……後悔、あとはそうだな……」
「破壊と創造、そして媚びですか」

 違法薬物係画塾 アトリエ野菜。

 大麻やコカイン、MDMAなどの違法薬物が法律で許可されるようになってから随分と経った。初老を過ぎた私も、若いものには負けておられんと毎分のように注射を打ち、煙にしたものを吸い、粒をばりぼりと食らい、粉末をふんって吸う。そんな毎日だ。

「しかし何度考えてもおかしいのですよ。ピンクの象は存在しないにも関わらず、トんだ奴はみな同じ象を見る」
「それは単に我々がそういった表現を知っているからだろう」

 先生はつまらない議論だと言いたげに、MDMAを液体で溶かしたMDMA絵の具をべちゃべちゃと私の右耳に塗る。少しの時間、およそ三十時間ほどそんなことをされているので、私は遂にその筆に噛み付いてやった。

「な、何をするんだね」
「先生マジメに聞いてください。良いですか、実際の研究結果として幼い子供も、全盲の人間も、薬物を使用した時だけはみな同じピンクの象を見ている。これは異常だと、そう思わないのですか」
「ううむ……」

 薬で幻覚を見る際に蛍光ピンクの象が現れる。私はその描写を見る度に常々思っていたんだ。これは蛍光ピンクの象が実在するのではないかと。どこかで私たちを観察しているのではないかと!
 一般的には『ラリってる=蛍光ピンクの象』という繋がりを潜在的に色々な場面で与えられているから、自分がおかしくなってしまった時も脳がその潜在意識に縋って、憎たらしいあの象(蛍光ピンク)がのこのこと現れるとされているが、それは間違いなのではないかと!

「先生! どうなのですか!」
 
 興奮したせいで視界が回る中、俺は、私は先生の胸ぐらを掴……もうとして、しかしその手は宙を切って体勢を崩す。先生が持っていた筆が、ちょうど前に倒れる俺の首に突き刺さり、えずく。先生は先生で俺に襲われて動揺したのか、絵を舐め始めた。先生ダメです! その絵のキャンバスは死体なんですから!
 首を押えながら、声のような何かを叫んで私は先生に後ろから抱きつき、先生はMDMA絵の具がびっしりと塗られた死体を舐め回す。舐め回された死体はそのままヨダレによって、傾いてる床(教室全体がすべり台状になってる)を滑り、そのまま出口のドアとぶつかった。

「おいおーい。ここの先生はダメダメじゃんかよぉ」

 その時だった。そのキャンバス(私の実の姉)をドアで弾いて入ってきた男がいた。
 
「ピンクの象は居るさ、俺ちゃんも見たことがある。アレは絵の神だよ」

◇◇◇

 

「警察だ!!!」

 ドアが勢いよく開かれ、ばんっ、と音が鳴る。こちらの都合などハナから無視するつもりだと主張するように、続いて騒がしい足音が俺の方に向かってきているのが聞こえた。

 俺はその音がなんなのか、二秒ほど思考したのち、慌てて机の上に散乱していた薬剤と、まだ中身が詰まっている瓶を合わせて窓の外に放り投げる。外は海だ。海という名のデータの廃棄場である。

 その瓶がこの部屋というデータの区画から切り離され、完全に消去されるのと同時に警察は突入してきた。俺は為す術なく、ただ力任せに拘束される。

「龍獄門 伐汰! 貴様を虚言散布の罪で逮捕する!」
「やめろ! はなせ!」
「ええいっ、暴れるなっ!」

 両腕に手錠をかけられ、両肩を二人がかりで押さえつけながらも俺はこの小説を完成させようと藻掻く。警察の連中はただ醜く俺が抵抗しているだけだと思っているようだ。だから、押せた。予めこんなことが起きてもいいように設定していたキーを。

◇◇◇

 これは事前に設定された文言です。

 読者の皆さん。わたくしは捕まってしまいました。この拡張されたインターネット世界では、実世界とは異なる法律が存在します。その一つであるフェイク情報の意図した拡散、それにわたくしは違反していたのです。また幻覚加速剤の使用も余罪として調べられるでしょう。わたくしはソレの中毒でしたので。

 つまり中毒とは、戯言を吐くことに中毒であった、と。この文章すらも戯言の可能性に怯えながら、そうわたくしは言葉を紡いでいるのです。

◇◇◇

 戯言を吐くことに中毒である。

 なぜならば、戯言には意味が無いからだ。

 意味が無いと言えば、俺である。

 眠い。昨日は二百四十八二時間と四日しか寝ていない。

 おやすみなさい

 

 

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