「これ、何だろう」
「え?どれ?」
「ほら、一番上の棚の光ってるやつ」
「何言ってるの?古本ばっかだからカバーも反射してないし光りようがなくない?」
「え?いやいや、光ってるじゃん。反射とかじゃなくて発光してるのがあるでしょ、一冊。あれだよあれ!」
「だからないって!……はぁ。面白くないよそれ」
「違うって!冗談じゃなくて本当に……」
「眼科行ってきたら?」
「視力2.5あるんだけど」
「あっそうだ、今日病院の予約あったんだった!やばい、時間ない。ごめん先帰るね!」
「あっちょっと!……相変わらずマイペースだな。それにしてもあの本、何で……」
「その本、気になりますか?」
「あっ、いや、その……」
「よかったらもらっていってください。代金はいりませんから」
「えっ?そういうわけには」
「良いんです。うちの店の中でも特段古くて値段のつけようがなくて。それに、本は自分から相応しい主を選ぶものですから」
「……こうして、僕は古本屋のおじいさんに半ば押しきられる形で不思議な本をもらった。なぜかおじいさんが棚から本を抜くと光は収まってしまった。表紙はどこか外国の文字で書かれていて読めないけれど、手に取った瞬間、この本に呼ばれたような気がした。……その夜、本を開こうと表紙に手を置いたその時、本がひとりでに開いて魔方陣のようなものが浮かび上がったんだ」
「--あなたが新しいご主人様?」
「突然現れた『それ』は、例えるなら春の雷のように僕を日常から宿命の渦中へと引き込んで行った。この時の僕はまだ知らない。各地に散らばった八冊の本を巡って世界は既に動き出していたことを……」
