【!お読みいただく前に!】
・すごくげひんです。
・エロとグロ以外のすべてのダメな要素が詰まっています。
・無理だと思ったらいつでもブラウザバックしていただきますようお願い申し上げます。
◇
「さぁ始まってまいりました、全国嘔吐我慢選手権大会、決勝戦です!」
「実況はわたくし、実 京太郎、」
「解説は私、甲斐 節乃でお送りします。よろしくお願いします」
「甲斐さん、よろしくお願いします。甲斐さんは昨年引退を表明した女子ゲロリアンで、ガマリンピックでのガマリスト経験もある嘔吐我慢の第一人者として知られていますが、甲斐さん、今回の対戦カードについてはどうお考えですか」
「そうですねやはり、決勝戦だけあって双方とてつもないゲロリアンですから、いかに相手のペースに呑まれないかというのがポイントになるかと思います。積極的な、攻めの嘔吐我慢に期待ですね」
「ありがとうございます。攻めの嘔吐我慢ですね。あ、そろそろ選手入場の時間ですね」
「はい。赤コーナーから入場するのは、嘔吐バックス(株)社長兼、国内に6人しかいない1級嘔吐トレーナーのひとり、下呂・ハカン・オェッラシード選手です。サウジアラビアからの帰化選手ですね」
「筋骨隆々、大胆不敵。堂々たる入場です。覇気といいますか、やはりオーラが違いますね」
「そうですね〜。続いて青コーナー、吐かせ太郎選手です。こちらは期待の新星、プロとしての嘔吐我慢キャリアは僅か半年と、おそるべき成長率を見せています」
「はい。半年ですからね、ちょっとわたくしも信じられません。それまでは何をされてた方なんでしょうか?」
「情報によりますと、前職はウィーンでヴァイオリニストをされていたそうですね」
「ウィーン!ヴァイオリンもそうですが、嘔吐の本場でもありますね(※現実のウィーンとは一切関係ありません!)」
「そうなんです。彼はもともと現地の草嘔吐選手権の表彰台を総ナメにしていたそうで、ヨーロッパでは知らぬ者のいない本場のゲロリアンだったんですね」
「ほほう。それでは実際のところ、国内では無敗を誇る下呂選手のほうがチャレンジャーという見方もできそうですね」
「そうですね。日本対世界、という構図にもなってくるかもしれません。期待の一戦です」
「あ、ここで一旦CMですね」
「さぁ、全国嘔吐我慢選手権大会決勝、まもなく戦いの火蓋が切って落とされます」
「ここで視聴者の皆様向けにルールのおさらいをしておきましょう」
「よろしくお願いします」
「はい。まず、国際嘔吐我慢連盟のレギュレーションでは、試合時間は60分と定められています。それまで両者とも嘔吐しなければ引き分け、双方の健闘を讃えるというわけですね。選手は試合前日からの食事制限によって条件を揃え、事前に定められた同量のメニューをドカ食いしたところでゲップオフという流れです」
「なるほど。それで今回のメニューは……」
「二郎ですね。原点にして頂点、説明不要のその味は全国いや世界のラーメン愛好家からカルト的な人気を誇っていますが、その暴力的な旨味と満足感の分、胃腸へのダメージも尋常なものではありません」
「やはり二郎ですか。大会の歴史上、二郎回は例外なく激戦になってきていますからね。開幕前から熱気が実況席まで伝わってくるようです」
「今回は麺量1kgですね。お店での提供量の約3倍という驚異的な数字ですが、両選手ペロリと平らげました。私も見ていてお腹すいてきました」
「そうですか……。こちらはもう見てるだけでお腹いっぱいです」
「人それぞれですからね。さて、基本的なルールは先程ご説明した限りですが、現代嘔吐我慢においてはその戦術も複雑化してきておりまして、試合を有利に進めるうえで決定的なポイントがひとつあるんですね」
「ほほう、決定的なポイント。それは一体?」
「はい、妨害です」
「妨害」
「妨害です。ルール上、相手が食べるのを邪魔することはできませんが、相手が我慢するのを邪魔することはできますからね」
「なるほど。しかし、我慢するのを妨害、というのはちょっと想像がつきにくいですが……」
「はい。旧来、嘔吐我慢の試合とはとても静かなものでした。例えるなら将棋やチェスといった、盤上での戦いに近いでしょうか(※んなわけねえだろ!)」
「なるほど。視覚的な動きの大きさよりは、双方の一挙手一投足、表情や汗など細かい状況要素のひとつひとつが勝敗に直結する、動ではなく静のスポーツというわけですね」
「はい、まさに。しかし、この四半世紀で嘔吐我慢の競技としての人気が大きく高まったことで、その実態も目まぐるしく進化してきたんですね」
「なるほど。どう変化してきたんでしょう?」
「はい、それが先程の妨害に繋がってくるんですね。すなわち、我慢相手への身体的・心理的接触が認められるようになりました」
「それはまた、劇的な変化ですね」
「はい、それはもう劇的です。これらの妨害行為についてはかなり細かいルールが設定されていますのでここでの説明は簡単なものに留めますが、特筆すべきはターン制になっていることですね」
「規定の行動回数を消費すると、妨害権が相手に移るということですね」
「はい。このようにして相手に執拗な妨害を行うことで、相手の耐久力や精神力、集中力を削ぎ、我慢の決壊を早めることで勝利をもぎ取る。これが“攻めの嘔吐我慢”です」
「なるほど。様々な戦術的妨害が予想される本競技ですが、反則行為などはあるんでしょうか?」
「良い質問ですね~。実際のところ、反則が取られることはあまりありません。嘔吐我慢という競技の性質上、嘔吐促進剤や下剤などが用いられれば一発アウトですが、そんな事例は歴史上ほとんどないんです。もとが勝ち負けを競う競技というよりお祭り騒ぎですから、お互い全力を尽くすことができれば細かいことにはこだわらないという大らかな性格もこの競技に独特の性質ですね」
「ありがとうございます。さて、まもなく試合開始です。ここからは両選手にズームした白熱の映像をお楽しみください!」
「赤コーナー、下呂・ハカン・オェッラシード選手は試合前の挑発行為もパフォーマンスとして人気を博していますね。今回は青コーナー吐かせ選手に向け、執拗にゲップをかましています。まるでジェットエンジンのような音量ですね」
「マイク通さずにここまで聞こえましたね。本当に人間?」
「しかしこれ、実はものすごくリスキーな行為なんですよね。ゲップとは横隔膜の振動によって胃から空気を押し出しているんですが、これを意図的に行う場合は食道の弁を開き、胃腸へ空気を取り込む必要があります」
「つまり、ただでさえ満腹の胃腸をさらに充填、蠕動させるということですか?」
「はい。リスクの大きさがおわかりいただけたかと思います。彼の人気にはこういったアグレッシヴなエンターテイナーとしての側面も大きいですね」
「対する青コーナー吐かせ太郎選手、まるで動じていません。どころか飲酒、飲酒です!缶ビールを数本、さらには揚げにんにく、キムチ、納豆、イカの塩辛!完全な居酒屋ムーヴをかましています」
「こぉ〜れは、やってますね〜(笑)」
「しかしこれ、ルール的にはアリなんでしょうか」
「ああ、それはもちろんアリです。食べ物に関しては多く食べて有利になることは基本ありませんからお咎めなしです。また国際レギュレーションでは、水分補給用に2Lまで飲み物を持ち込むことができるんですよね。その飲み物の成分については厳密な指定はありませんので、健康に害がないものならアリなんです。スポーツドリンクや烏龍茶が推奨されてますね。私の現役時代は白湯が相棒でした」
「ほう、さゆですか」
「いえ、パイタンです」
「なるほど。さて、両選手の手荷物チェックが終わりました。双方歩み寄り、固い握手を交わします。ぶつかり合う視線から揺るぎない闘志が見て取れますね」
「コンディションは万全に見えますが、はたして」
「続いてコイントス、表が下呂選手、裏が吐かせ選手の先攻です。さぁどうか」
「表ですね。下呂選手の妨害でゲップオフです」
〜審判のゲップが響き渡る〜
「おおっとこれは!?」
「速攻です!下呂選手が速攻を仕掛けました!」
「目にも止まらぬ動きで吐かせ選手に間合いを詰め、これは」
「ゲップです!特大のゲップをお見舞いしているッ!さらに、審判による開幕のゲップと重ねることで威力を相乗していますね」
「しかし甲斐さん、試合前の挑発時とは音がいささか違うようですが」
「鋭いですね〜。そう、これは下呂選手必殺の“マジゲップ”なんです。試合前の挑発ゲップと比べ、音はいくぶんシャープで小さく聞こえますよね?」
「はい。威力も小さくなるんでしょうか?」
「いえ、その逆です。ゲップの音とは圧縮された空気を一気に押し出すことによる破裂音とされていますが、そのため発射された空気は全方向に拡散するのが通常です」
「はい。しかし“マジゲップ”は違うということですか?」
「ええ、“マジゲップ”は空気を拡散させず、一本の槍のように収束させて撃ち出す高等技能です。横隔膜、声帯、食道、さまざまな部位を精密に連動させる必要があり、自在に撃てるようになるには相当な鍛錬が必要になります。失敗すれば通常のゲップ以上に胃を膨張させてしまう、両刃の剣でもあります。さらにはそこに下呂選手の並外れた肺活量が加わることで、尋常ならざる破壊力を発揮するというわけですね~」
「なるほどしかし、ゲップにおける破壊力とは?」
「いろいろありますが、臭いと精神的ショックでしょうね。ニンニクマシマシカラメアブラチョモランマの二郎1kgに加えスープ完飲のゲップが鼻腔を狙いすまして飛んでくるわけですから」
「ウッ。聞かなきゃよかった」
「そして下呂選手、間髪を入れずマジゲップの乱れ撃ちです!」
「これはひどい!吐かせ選手、早くもダウンかーッ!?」
「いえ、防いでいます!ものすごい忍耐力です!!」
「っとここで妨害終了の笛が鳴りました!吐かせ選手に妨害権が移ります!」
「ここは笛なんですよね。ゲップはよく使われる妨害技なので、ややこしくないように審判はホイッスルも携帯しています」
「じゃあ全部これでいいのでは?」
「開幕の合図だけは伝統としてゲップと定められてます。ゲップオフの語源でもありますからね」
「なるほど、おぉーーーッと!?ここで吐かせ選手、ヴァイオリンです!どこからともなくヴァイオリンを取り出しました!これはアリなのか!?!?」
「審議中です!そして演奏、演奏です!元コンマスの実力が思わぬところで発揮されェェェェェェェ!?」
「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃなんだこの音は!?!?上手い下手とかいうレベルではありません!!地獄、地獄です!!!」
「プロの技術の全てを用いて音量と不快感を高めていますねぇぇえぇえぇぇえぇぇおうぇ」
「おぃおおぃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「ふぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぁああああああああああああああああ」
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、審判が妨害終了のホイッスルを鳴らしました。死ぬかと思いました」
「審判の額にも脂汗が浮かんでいます。あ、出血していますね。唇を噛むことで正気を保ったようです。さすが、厳格で硬派なジャッジングに定評があります」
「さて、妨害を受けた下呂選手にカメラがズームしていきます。嘔吐は……」
「嘔吐なし!嘔吐なしです!!苦悶の表情を浮かべながらも耐えているゥ!!!」
「しかし下呂選手、すぐには立ち上がれません。次の妨害までは最長10分の猶予が認められていますから、ここで体力の回復を狙います」
「一旦CM入ります。あと自分もトイレ行ってきますね」
「さて、三半規管へのダメージはある程度回復したようです、下呂選手ふらつきながらも立ち上がりました」
「ゆっくり、ゆっくりと吐かせ選手へと歩み寄っていますね。身体的な接触もある程度までは認められています、さぁ何をしでかしてくるか」
「おおおおおおおっとこれは、殴った――――――――――――――ッ!!!!みぞおちにイイのが入りました!!!これはいくらなんでも」
「アリですね。ルールで禁止はされていません。しかし試合後の逮捕例がありますが今回はどうでしょうかね~」
「えー、審判からのストップが入りましたが、これは妨害終了の笛ですね。ずいぶん早いですけど」
「あ、身体的な接触は妨害ポイントを多く消費しますから、一発でターンが終了するケースが多いんです。裁量は審判に委ねられます」
「なるほど妨害ポイント。そして、暴力行為へのお咎めはないようです。どうなっているのでしょうか。スポーツマンシップは既に死したか」
「スポーツとして認められたのが最近ですからね~。さて、吐かせ選手、血反吐を吐いたように見えましたが、成分鑑定の結果ゲロ判定は出ていませんね。試合続行です。よく耐えています」
「あの、自分もう帰っていいですか?パンチはあかんやろパンチは」
「まぁまぁ。吐かせ選手、赤い唾を吐いて立ち上がりました。無駄に絵面がカッコよかったですね、急に少年漫画のようです」
「少年漫画に謝りましょう。あとオートバックスとウィーンと葉加瀬太郎にも謝りましょう。ほんとごめんなさいほんと」
「次の妨害に移る前に吐かせ選手、自分のベンチへと引っ込んで……あ、出てきました。手に持っているのは酒瓶ですね」
「二度と受けるかこんな仕事……しかし吐かせ選手、水分を補給する意図はないようですね?」
「アルコールの加水分解にはかえって水分を必要としますからね。喉の渇きを潤すうえでは飲酒が悪手というのは周知の事実です。まぁさっきビール飲んでましたが」
「おおおおおおっとこれは!!!脱兎のごとく吐かせ選手駆け出し、下呂選手へ肉薄!そしてこれは」
「スピリタスです!アルコール度数99%越えのバカの酒!そのバカの液体を、迷わず下呂選手の口へと叩き込んだ!これは命に関わりますよ~!」
「たまらず下呂選手崩れ落ちる!報復としても度を越しています」
「これもルール上は問題ありません。持ち込んだ水分は通常自分が飲用することを想定していますが、状況によって相手選手に提供することも認められています。フェアプレーの精神ですね~」
「それっぽいこと言ってますが明確に抜け穴を突かれてますよね?裏技組み合わせて即死コンボが編まれてますよね??」
「さて、音響攻撃による三半規管へのダメージの次は、アルコールによる重篤な酩酊感が下呂選手を襲います。今度こそ致命的な一撃となってしまうのか」
「しかし下呂選手、立ちましたね。おそろしい打たれ強さです」
「顔色がすごいことになっていますね~。目も据わり、今にも吐かせ選手を絞め殺さんばかりの形相です。アルコールは鬼神を目覚めさせてしまったのかもしれません」
「あーっと下呂選手、見た目のわりには冷静ですね。ゆっくりとベンチに戻り、何かを取り出して戻ってきました。ゲップ、暴力に続いて次はどんな凶行に及ぶんでしょうか」
「あ、さっき説明していなかったことが一つありましたね」
~審判のゲップが響き渡る~
「おや、これは?怒り猛る下呂選手を審判が制しています」
「コートチェンジですね。両選手の立ち位置が入れ替わります」
「なるほどコートチェンジ……いや、意味あります?サッカーとかならまだしも」
「はい。実のところ、コートについては試合に影響はありませんが、それに伴って妨害順も逆転するんです」
「! なるほどつまり」
「はい。これまで見てきてお分かりかと思いますが、本競技は本来的に短期決戦が常です。一撃で決着がつくことが珍しくない以上、先攻が非常に有利になりますよね」
「ええ、それはもう」
「そのため、二度の応酬を経ても決着がつかなかった場合は、先攻と後攻が入れ替わることになっています。ここにきて、吐かせ選手に空前のチャンス到来ですね~!」
「なるほど。しかし先程から吐かせ選手、少し顔を赤らめてもじもじしているような……。体に不調があるのでしょうか」
「いえ、どちらかといえば精神的なものに見えますね~。そしてこれは不調というよりも……。大技を繰り出す心の準備のように見えます」
「なるほど……?そして吐かせ選手、覚悟を決めたように自身の頬を平手で叩きます。それから身一つでゆっくりと下呂選手のほうへ歩みを進め──これは!?!?!?!?」
「ディープキスですね~~~!!!!!!絵面がやばいです!!!!!うっひょ~~~~!!!!!!」
「えー、放送が止まった場合は皆様お察しください、Nice boatです。しかしこれ、妨害としてはどんな意図があるんでしょうか?」
「おや、お気づきになりませんか?試合開始前、吐かせ選手が何を口にしていたか」
「試合前……まさか!」
「はい。吐かせ選手はビールに加え、大量のにんにく、キムチ、納豆、塩辛を口にしています!それらが口の中で混ざり合い、少しずつ消化されたことで、あらかじめ食べていた二郎の臭いをさらに凶悪にチューンアップしています!」
「生臭さがプラスされた最強最悪の口臭をもって吐かせ選手、下呂選手にディープキスです!こぉ~~~れは長い!!もう唇を重ねてから5分が経過しています!!この世の終わりのような濃厚さです!!」
「特に描写してませんでしたけど二人ともおっさんですからね~。たまらん」
「黙れ」
「すいません」
~審判のゲップが響き渡る~
「……長い、永い口づけが終わりました。両者の口から透明な糸が引いているように見えます」
「納豆ですね」
「そうでしょうね」
「二人とも立ち上がれませんね~。腰が砕けてるんでしょうか。大変えっちだと思います」
「よそでやってください」
「ッス」
「さて、ここから見ているだけでも吐き気を催す光景でしたが、下呂選手は耐えきれるか……あ、映像が戻ってきました。これは……」
「嘔吐、してませんね~。信じられない耐久力と精神力です。吐かせ選手、千載一遇のチャンスを逃しましたね」
「しかし、試合開始からおよそ50分が経過しています。次の下呂選手の妨害がこの試合の勝敗を分けることになりそうです」
「耳破壊、スピリタスからの激臭ディープキスですからね。下呂選手は怒髪天を衝きそうな様相です。次は何を繰り出してくるんでしょう」
「その下呂選手、しかし冷静ですね。ふらつく体を引きずってベンチへと歩いていき、なにかを取り出して戻ってきます。なんでしょうか」
「これは……なにか小さな紙袋のようです。中身までは見えませんが……」
「ここで下呂選手走り出した!吐かせ選手へと一直線、速い速いそして、吐かせ選手の口に何かを放り込んだ――ッ!!」
「寄った映像が出ました!これは、薬です!何らかの薬物です!」
「まさか嘔吐剤か―――ッ!?たしか嘔吐剤と下剤はルールで禁じられていると説明がありましたが」
「鑑定結果出ました!これは下剤ではなく」
「ではなく!?!?!?!」
「毒ですね」
「毒」
「はい毒です。命にかかわりますね~」
「さすがにこれは」
「ルール的にはお咎めなしですね。ですがさすがに終わったら逮捕です。あ、外に警官隊が来ているようですね」
「カスのルールじゃないですか。あとそれ確実にパンチのせいですね」
「ですよね~」
「そして下呂選手のあまりに外道行為に対し審判が駆け寄り、あ~っとバツのハンドサインです!試合終了!試合終了です!本日の試合は無効試合と断じられました!」
「吐かせ選手のもとに担架が運び込まれます。これは病院に直行ですね~。さすがに棄権しなければ命の危険があります」
「しかし吐かせ選手、吐かない、まだ吐きません!試合は終了しているが、これははたして!?」
「ゲロリアンとしての矜持が彼を縛るんでしょうか。意識も朦朧としているように見えますが……試合が終わったことを把握できていないのかもしれません」
「執念だけで嘔吐を堪えているということですか。そんな……」
「これも、ゲロリアンとしての性……いえ、業と言ってもいいかもしれません。一度この道に入ってしまえば、自分の命すら顧みなくなってしまうんです」
「どうしてそこまで」
「だって……だって、楽しいんです。生きているって実感できる。嘔吐を我慢することは、命を燃やすことです。その炎の輝きをもってして見る人の心にも熱を届け、勝利をもってして自分が生きた証を残す。私たちにとって、これは命より大事な誇りの闘いなんです。だから……だから、きっと吐かせ選手も、幸せだったんじゃ、ないかなぁ────」
「そんな、ことって……」
「どうか笑ってください。私たちはひとつの闘いを、命の輝きを、見届けたんですから」
「吐かせ選手……吐かせ選手…………………ッ!!」
◇
「夢か」
