メモ

1週間分の食料

歯みがき粉

風呂掃除用のブラシ

 

 

 

 

大介が疲れた体を引きずって帰ってきた自室のちゃぶ台の上に、それだけ書かれたメモが置かれていた。しかし、大介にそんなメモを残した記憶はなかったし、彼の字はかなりの悪筆でありメモ内の筆跡とは似ても似つかない。ぐるりと部屋を見渡してみても、何者かが入って荒らし回ったような様子もないし、強盗目的ならこのようなメモをわざわざ置いていく理由もないだろう。少し考えたあと、乱雑にそれをゴミ箱に叩き入れ、そんなことがあったことも忘れてしまった。

 

明後日のごちそうの材料

お酒(あるだけ)

レンポレキサント

 

 

大介がほろ酔い気分で気分良く玄関のドアを開ける。上司が子供を産んでその祝酒だった。財布を出さずにすんだことに心躍らせていた彼の気分は、廊下を通じてまっすぐ前方の机の上にあのメモを見つけた時に急冷された。靴を脱ぎ散らし、駆け足でそれに飛びつく。前回と同じように買い物メモが机の上にただじっと座っている。例の流麗な文字で書かれているそれだったが、その最後の部分が彼の目を止まらせた。レンポレキサント。聞き覚えのない響きだった。部屋の隅でホコリを被っていた辞書を引っ張り出してきて調べてみても、それらしい項目は出てこない。仕方がないので、彼はメモ帳にミミズののたくったような字で「レンポレキサント」とメモを残すことにした。

「そりゃ睡眠薬だろう」

物知り顔で上司が答えた。彼は小学校の頃に広辞苑を暗記したと自称している生き字引である。

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