ひざまくら部

 ひざまくら部。

 そこまで、男を魅了する部活があるだろうか?

 俺はこの高校にそのひざまくら部があると聞いて、入学を決めた。正直、俺は半信半疑だったから、そのひざまくら部を詳しく調べた。

 すると、部員数は10人を超えていて、そのどれもが女子だそうだ。それも部活の集合写真に写る部員は全員可愛かった。

 なぜ、そんな魅惑の部活に男が入っていないのか疑問に思う人もいるだろうが、それは些細なことだ。その疑問には、この学校が去年まで女子高であったからと回答しておく。

 だから、今年入学した俺は、男1号として、ひざまくら部に入部する。

 俺の3年間はバラ色だぜ~!

 俺はそう考えていると、顔が緩んでいることに気が付いたので、きちんと真面目な顔に直しておく。

 いくらひざまくら部と言えど、膝枕され放題とは限らない。他の部員に嫌われては終わりだ。

 俺はきちんと身なりを確認した後、ひざまくら部の部室の前に立った。俺はそのひざまくら部の部室の前で、妄想をする。

 そもそも、部員が女子しかいないと言うことは、今までは女子同士でひざまくらをしあっていたのだろうか?

 そんな百合パラダイスが3次元に存在するのか?

 それを想像した俺の顔は再び緩む。俺はその顔を再び直すと、ひざまくら部の部室の扉を勢い良く開ける。

 部室の仲は真っ暗だった。

「ちょっと! 誰か知らないけど、早く扉閉めて! 膝が日焼けしちゃったらどうするの!!」
「す、すいません。」

 俺は暗闇から飛ぶ女子の怒号に従い、扉をすぐに閉めた。

俺は膝に日が当たっただけで、駄目とは意識の高い部活だと思った。

「全く…、あれ? 見ない顔だね?」

 俺は真っ暗な部屋に目が慣れていなかったので、声の主がどこにいるのか分からなかった。

「あ、あの、ひざまくら部に興味があってきたんですけど?」
「ああ、新入部員? なら、部屋の隅でパソコンいじっている部長に声かけてくれる?」
「どこですか?」
「ああ、目が慣れてないのね。私は隣の部屋に移動するから、電気着けていいわよ。」
「電気のスイッチはどこですか?」
「そこ!」
「どこだよ!」 

俺は暗闇の中で突っ込むが、会話は終わってしまった。

 しかし、俺もしばらくすると目が慣れてきた。そして、扉の近くに設置されたスイッチのようなものが見えた。俺はそのスイッチを入れる。

 すると、部屋の電気が点く。俺は眩しさに一瞬目をくらませられたが、すぐに慣れる。部屋の中には10人程の女子がそれぞれのことをしていた。

 それもどの子も可愛い。

 俺は心の中でガッツポーズをした。

 そして、部屋を見渡すと、部屋の隅にパソコンを膝に置いて、何か作業している女の子を見つけた。

「すいません。ひざまくら部の部長さんですか?」
「はい! 新入部員の方ですか?」
「はい!」
「男の子じゃないですか!」

 その部長の女の子は俺に微笑みかけてくる。

「はい!」
「やったー! 今年から共学になるから、男子の部員欲しかったんだ~!

 やっぱり、ひざまくら部には男子が必要だからね~!」
「そうですよね~!」
 
 俺は歓迎されている。それもこんなに可愛い女子に。

 この高校に入って良かった~!

「……ところで、パソコンは持ってるの?」
「パソコン? いるんですか?」
「いるでしょ!」
「……一応、親の使ってないノートパソコンがありますが。」
「なら、次は持ってきてね! 必須だから!」
「そうなんですか?」

 俺は違和感を覚えながら、同意した。

「ねえ! 君?」

 俺が部長と話していると、隣から別の部員が話しかけてくる。

「右膝にマスタードを塗って、左膝にバーベキューを塗る。そして、その膝に塗ったソースにナゲットをベタベタと泳がせる。最初は右膝、次は左膝、右膝、右膝、左膝、最後に右膝と左膝ミックス。

 この自分の膝にしかない皮膚の味とソースの味がたまんないぃぃぃぃ~~~!!!」
「膝マックLOVE?」
「えっ?」
「もしかして、膝マックLOVEですか? この部活?

 あなたは膝でマックナゲット食べるきっしょいことしてるし、部長は膝の上で、パソコンのマック開いてますよね?

 2人とも膝マックLOVEの人ですよね!

 ……それと、今気が付きましたけど、最初の暗闇にいた部員は、膝真っ暗部の人でしょ?」
「ねえ、私と一緒に神奈川県に放火しに行きましょう!」
「火、座間クラブ? 犯罪なんでやめてください!」
「ワンピースのベストバウトは、ブロギーの膝を集中して頭突きしたクジラの戦いだよなあ。」
「膝マークラブーン? ラブーンがブロギーの膝をマークする存在しない記憶を捏造しないでください。しれっとラブーンがルフィとの誓い破ってるし。

 それに、仮にその戦いがあったとして、どう描いてもつまんないでしょ!」
「私はドミノピザの御曹司なので、踊りながら、ピザを投げ捨てます!」
「ピザ撒く乱舞? 

もう膝でもない! 10回クイズみたいなこと始めだした。」
「そんなことより、私達とSNS交換しましょう? 新入部員でしょ。」
「……LINEですか?」
「いいや、Facebook。」
「We are the Mark LOVE? 

 マークザッカーバーグ好き集団ですか? 今時、Facebookを連絡手段で使っている高校生いないですよ。それと、文法無茶苦茶です。

 ……ちょっと! こんなのただのダジャレクラブじゃないですか! もう帰ります!」
「ちょっと待って!」
「なんですか? 

 グルコサミン飲んで、膝の膜強くする膝膜LOVEの人ですか?
 それとも、冷房器具に礼拝する膝まづクーラー部の人ですか?

 どういうダジャレの人ですか?」

 そう言うと、俺に話しかけてきた女の子は、その場で正座して、膝を指差した。

「寝転んで? 私は正真正銘の膝枕部の人よ。」
「えええ~~~!!」

 俺はすぐに彼女の膝に寝転んだ。俺は彼女の膝の上で眠り込んだ。

 

「はっ! 今何時ですか?」
「深夜の4時です。」
「11時間も!」
「いいえ、あの日から2日経ってます。」
「59時間も!」
「はい。」
「凄い、これが真の膝枕部の実力! 歩く睡眠薬だ!」
「もう遅いので、また明日!」

 そう言って、彼女は立ち上がる。

「凄い! 59時間正座していたのに、全く痺れている様子が無い!

 それと、もう遅いのでって考えに昨日と一昨日に思わなかったのか?」
「あっ、そうだ。

 君と一緒に膝枕世界大会に出たいな!」
「膝枕世界大会? 日本大会があったんですか?」
「日本大会は筆記試験だから。」
「膝枕の何を問う試験なんだ?」
「世界大会は2人1組で行う実技なの。」
「行ってもいいですけど、どこでやるんですか?」
「それはもちろん、膝枕発祥の国チェコ!」
「膝枕の発祥はチェコなんだ。そもそも膝枕に発祥とかあるんだ。」
「大丈夫! 私は日本代表だから、ビザとパスポートは偽造してあげる。」
「分かりました! 一緒に世界大会優勝しましょう!」

 俺はそのままチェコに向かった。

「いよいよ、決勝ね。」
「はい、世界大会なのに、出場者が2人なので、1回戦が決勝ですね。」
「でも、相手は強敵よ。相手は三重県代表の比嘉よ。」
「日本人対決? 日本人2人がチェコで戦ってるんですか? 日本でやらないんですか!

 それと、三重なのに、沖縄の苗字?」
「緊張してる?」
「はい、日本人対決なのに、チェコ人が3万人観客席にいますからね。」
「大丈夫、チェコ人は、オランダ名産のマヌカン人形だと思えばいいわ。」
「マヌカンの想像ができません。

それとチェコ人をオランダの人形で例えないでください。」
「出番よ。」
「緊張するなあ。」

「いよいよ始まりました! 膝枕世界大会決勝!

 司会は私、陳楚欽です。」
「チェコで中国人が日本語を使って司会してる。」
「さて、両者膝の状態は万全のようです。仕上がっています。

 それでは、今大会は安全第二、下下道道でやっていきましょう!」
「駄目じゃん!」
「君、はやく寝て! 失格になっちゃう!」
「チェコまで一緒に来たのに、名前覚えられてない。まだ君のまんま?」

 俺はとりあえず、彼女の膝で寝た。

 俺も彼女の名前知らなかった。

 

「結果発表~~~!!!」
「寝てた。」
「89時間ぶりにお目覚めね。」
「89時間! もう半分死んでるじゃん。」
「君のプレーは完璧だったわ。

 でも、最後のあれは……、ちょっと恥ずかしかったかも……。」
「俺、なんかしました? その記憶買えるなら、闇金行きますけど。」
「審査の結果、勝者……

 三重代表じゃない方です!」
「司会者も俺達の名前を知らない!」
「やった~! 優勝よ!」
「やりましたね。」
「ちょっと待った!」
「なんだ! 比嘉!」
「呼び捨て?」
「ドーピングしてんだろ!」
「ドーピング? 大会コンセプトは下下道道じゃなかったのか?」
「してないぞ! 比嘉! 証拠あるのか?」
「証拠って、人が89時間寝るなんてありえねえだろ!?」
「やっぱり、あり得ないことだったんだ!」
「お前の連れが寝すぎて、時間に厳しいチェコ人は皆帰っちまったぞ?」
「チェコ人は時間に厳しいんだ。」
「本大会では、ドーピングについては自己申告制を取っています。

 認めますか?」
「クソシステム! 尿検査なり、血液検査なりしろよ! 言い逃れし放題じゃないか!」
「……しました! 

自分の膝にドーピングしました。 ゴメンナサイ。」
「言うなよ! 黙って、日本に帰ろうよ!

それと89時間寝た俺の方がドーピングされてないことに驚きだよ!」
「ええ、それでは、三重じゃない選手にドーピングが確認されましたので、ルールにのっとり、得点を0とします。」
「えっ!? まさかだけど……

 

 

 膝まくラブゲームってこと?」
「そういうこと!」

 

 

 俺は思った。

 もう帰宅部でいいや。

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