ハッピバースデートゥーユ〜と叔母が歌いながら、キッチンの奥からケーキを持ってきた。叔母の手作りだというそれは、普段自分で買うような何分割かされてるものではなく、私が今まで食べてこなかった部分も含めた、ケーキの真実だった。
ケーキの上には2本の蝋燭が立っている。デコレーション用のものではなく、桐箪笥から引っ張り出してきたのだろう和蝋燭であった。まぁ、叔母はこういう蝋燭以外のものをどこで買うのが良いかなんて知らなかったのだろう。
「さ、吹き消して」
叔母がカメラを構えて、部屋の電気を消した。暗闇には2本の頭が赤い蝋燭とそれに照らされた私の黄色い顔だけがあった。
いくよ、と叔母に一言かけて私は大きく息を吸い込んだ。一瞬口の中でそれを溜め、いざ吹き消さんとした時だった。
「あ! 何か忘れてたけどその蝋燭、命の蝋燭だったんだ!」
叔母が、思いだした!とばかりに叫ぶが、私の口の中の圧力は緊急停止を許さない。勢いそのままに蝋燭は吹き消えた。
叔母は「死神から命の蝋燭を預かってるおばさん『持ちがいいのよ』」をやっている。それをすっかり失念していた。
「で、これ誰のだったの?」
「誰だったかしらねぇ。日本のヘボ大学生だった気がするわ」
「ヘボ大学生て、じゃあ消えてもオッケーか」
「あははははは」(Twitterに事の顛末を書き込んでいる)
